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第29話 好きだからって、勝手に守っていいわけじゃない

last update publish date: 2026-09-22 15:29:38

第29話 好きだからって、勝手に守っていいわけじゃない

 競技場の裏で、陽菜は困ったように笑っていた。

「知らない先輩にまで、『匂いフェチの彼氏できたんだって?』って言われた」

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が冷たくなる。

 腹が立った。

 かなり。

 付き合っていることを知られるのはいい。

 俺と陽菜は昨日、そこについて話したばかりだ。

 聞かれたら隠さない。

 でも自分たちから言いふらしはしない。

 写真も勝手に載せない。

 告白の内容は二人だけ。

 それでいいと決めた。

 だが。

 匂いの話は別だ。

 あれは陽菜自身がずっと気にしていたことだ。

 それを知らない人間が、面白半分に口にする。

 俺はそれが嫌だった。

「誰だった?」

 声が少し低くなる。

「え」

「その先輩」

「悠真」

「名前分かる?」

「ちょっと待って」

 陽菜が俺を見る。

「怒ってる?」

「かなり」

「私より?」

「多分」

「それは駄目」

 意外な返事だった。

「何で」

「悠真が怒るのは嬉しいよ」

「嬉しいの?」

「私のために嫌だって思ってくれたんでしょ」

「そう」

「でも、私より先に怒らないで」

 俺は黙った
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